役立ち関連知識

加工・後処理の基礎

サポート材とは何か

サポート材は、3Dプリント時に宙に浮いた部分や急な角度の部分を支えるための補助構造です。プリント後に取り除く必要があります。

サポートが必要な場合

  • • オーバーハング角度が45度以上の部分
  • • 宙に浮いた構造(橋状の部分など)
  • • 細い突起物や複雑な形状

サポート除去の基本手順

  1. ニッパーやペンチで大まかに除去
  2. カッターで細かい部分を切り取る
  3. ヤスリで跡を滑らかに仕上げる

ヤスリがけの基礎

ヤスリの粗さは番手(#)で表され、数字が大きいほど細かくなります。段階的に細かくしていくのが基本です。

#120〜#240(粗目)

サポート材跡の除去、大きな凹凸の修正に使用します。削る力が強いため、形を整える最初の段階で使います。

#400〜#600(中目)

表面の平滑化、積層痕の軽減に使用します。粗目で整えた後の中間仕上げに適しています。

#800〜#1200(細目)

仕上げ研磨、塗装前の下地処理に使用します。表面を滑らかにして光沢を出すことができます。

水研ぎペーパーを使用すると粉塵を抑えられ、より滑らかな仕上がりになります。

カッターでのバリ取り

バリとは、プリント時にできる糸状の突起や、サポート除去後に残る小さな突起のことです。カッターで丁寧に除去します。

基本的な使い方

  • • 刃を寝かせて、削ぎ取るように使う
  • • 少しずつ削り、削りすぎに注意
  • • 角を落とす面取りにも使える

安全な作業方法

  • • 刃は必ず体から離す方向に動かす
  • • 作業台を使い、手で持たない
  • • 刃が鈍ったらすぐに交換する

ヒートガンを使った簡易仕上げ

ヒートガンで表面を軽く溶かすことで、積層痕を目立たなくし、滑らかな仕上がりにできます。

効果

  • • 積層痕を目立たなくする
  • • 表面に光沢を出す
  • • ヤスリがけの手間を減らせる

注意点

  • • 一箇所に当て続けない(変形の原因)
  • • 換気の良い場所で作業する
  • • 材料によって適温が異なる

ルーター(リューター)での微調整

電動の小型研削工具で、細かい部分の削り出しや穴あけ、研磨などに使用します。

主な用途

  • • 細かい部分の削り出し
  • • 穴の拡張や形状修正
  • • 研磨ビットでの仕上げ
  • • 彫刻や装飾加工

ビットの種類

  • • 砥石ビット:削り出し用
  • • ダイヤモンドビット:硬い材料用
  • • フェルトビット:研磨仕上げ用
  • • カッティングビット:切断用

塗装の超基礎

塗装は3つの工程に分かれます。それぞれの工程を丁寧に行うことで、美しい仕上がりになります。

1. プライマー(下地)

塗料の密着を良くし、発色を向上させる下地処理です。

  • • ヤスリがけで表面を整える
  • • 脱脂剤で油分を除去
  • • プライマーを薄く均一に塗る
  • • 完全に乾燥させる

2. 塗装(本塗り)

色を付ける工程です。薄く重ね塗りするのがコツです。

  • • 1回で厚塗りせず、薄く塗る
  • • 乾燥時間を守る(15〜30分)
  • • 2〜3回重ね塗りする
  • • ムラがないか確認する

3. クリア(仕上げ)

保護と光沢を出すための透明な塗装です。

  • • 本塗りが完全に乾いてから
  • • 光沢あり/なしを選べる
  • • 薄く2回程度塗る
  • • 24時間以上乾燥させる

必ず換気の良い場所で作業し、マスクを着用してください。スプレー塗装は屋外が理想的です。

ネジと締結の基礎

ネジの種類

3Dプリント品の締結には、主に2種類のネジが使われます。用途に応じて使い分けましょう。

タッピンネジ

樹脂に直接ねじ込めるネジです。自分でネジ山を作りながら締まります。

特徴:

  • • 下穴だけで使える(ネジ山不要)
  • • 簡単に取り付けられる
  • • 何度も脱着すると緩くなる

適した用途:

  • • 一度組んだら外さない部分
  • • 軽い負荷の締結
  • • 仮組みやプロトタイプ

小ねじ(ボルト)

ナットや金属にネジ山が必要なネジです。インサートナットと組み合わせて使います。

特徴:

  • • ナットやインサートナットが必要
  • • 何度でも脱着できる
  • • 強固な締結が可能

適した用途:

  • • メンテナンスで外す部分
  • • 強度が必要な締結
  • • 製品レベルの組み立て

インサートナットとは何か

インサートナット(熱圧入ナット)は、熱で樹脂に埋め込んで使える真鍮製のナットです。3Dプリント品に金属のネジ穴を作ることができ、非常に相性の良い締結方法です。

メリット

  • • 何度でも脱着できる
  • • ネジ山が傷まない
  • • 強固な締結が可能
  • • プロ品質の仕上がり

必要な工具

  • • はんだごて(40W程度)
  • • インサートナット
  • • 適切な下穴(設計時)

取り付け手順

  1. はんだごてで加熱
  2. 垂直に押し込む
  3. 表面と同じ高さまで
  4. 冷却まで固定

インサートナットは3Dプリント品を製品レベルに仕上げる重要なパーツです。メンテナンスが必要な部分には必ず使いましょう。

M3 / M2 などの意味

ネジのサイズ表記で「M」はメートルねじの規格を示し、その後の数字は太さ(直径)を表します。

サイズの読み方

M2
直径2mmのネジ
M3
直径3mmのネジ
M4
直径4mmのネジ
M5
直径5mmのネジ

3Dプリントでよく使うサイズ

M2

小型電子機器、精密部品、ミニチュア模型など

M3

最も一般的。小〜中型の部品、電子工作、ホビー用途

M4

中型部品、やや強度が必要な箇所

M5

大型部品、構造材、高負荷がかかる部分

3Dデータの入手方法

3Dプリントに必要な3Dデータは、主に3つの方法で入手できます。目的に応じて使い分けましょう。

1. ネットでダウンロード

3Dプリント向けのモデル掲載サイトが多数あり、無料・有料問わず膨大な数のモデルが公開されています。

Thingiverse

最大級の無料3Dモデル共有サイト。ホビーから実用品まで幅広い。

特徴:完全無料、コミュニティ活発

Printables

Prusa Research運営の無料サイト。高品質なモデルが多い。

特徴:品質重視、コンテスト開催

Cults3D

無料・有料混在。デザイン性の高いモデルが豊富。

特徴:デザイナー作品、有料モデルあり

Nextprint

ELEGOO が運営する 3D モデル共有プラットフォーム。世界中のユーザーが STL などの3Dデータをアップロード・ダウンロードできる。

特徴:ELEGOO 製プリンター向けのプロファイルやワンクリック印刷に対応しつつ、他社プリンターでも使いやすい汎用的な3Dモデルが公開されている。

ダウンロードしたモデルは、ライセンスを確認してから使用しましょう。商用利用が禁止されている場合もあります。

2. 自分でデザイン

自分でモデルを作成すれば、完全にオリジナルの形状を実現できます。用途に応じて2種類のソフトを使い分けます。

デザインモデル:Blender

特徴:自由な形状作成が得意。フィギュア、キャラクター、有機的な形状に向いています。

向いている用途:

  • • フィギュア・キャラクター
  • • 装飾品・アート作品
  • • 彫刻的な形状
  • • アニメーション制作

形状作成の考え方:粘土をこねるように、頂点・辺・面を操作して形を作る

CADモデル:Autodesk Fusion(旧Fusion360)

特徴:正確な寸法で設計できる。機械部品、実用品、組み立て式の製品に向いています。

向いている用途:

  • • 機械部品・工業製品
  • • ネジ穴などの精密加工
  • • 組み立て式の製品
  • • 実用的な道具・治具

形状作成の考え方:スケッチを描いて押し出す、回転させるなど、工学的な手法で形を作る

デザインモデルは「見た目重視」、CADモデルは「寸法・機能重視」と覚えておくと分かりやすいです。

3. AIによる自動生成

最近はAI技術の進化により、テキストや画像から3Dモデルを自動生成できるサービスが登場しています。

現状と可能性

  • • テキストから3Dモデルを生成
  • • 画像から3D化する技術
  • • まだ発展途上の技術
  • • 小物や簡単な形状なら実用的

注意点

  • • 複雑な形状は苦手
  • • 修正が必要な場合が多い
  • • 精密な寸法は期待できない
  • • プロトタイプ作成には便利

AI生成は今後さらに進化が期待される分野です。現時点では補助的な使い方がおすすめです。

3Dプリント作業に役立つ工具紹介

精密ドライバー

用途:細かいネジの締結、電子部品の取り付け

推奨サイズ:+00, +0, +1, -2.0, -3.0

磁石付きが便利、静電気対策済みを選ぶ

はんだごて(修正用)

用途:インサートナット挿入、表面修正

推奨出力:30〜60W(温度調整機能付き)

換気必須、やけど注意

ノズル交換工具

用途:ノズルの着脱、メンテナンス

種類:ソケットレンチ、専用工具

高温時の作業注意、適切な工具を使用

デバリングツール

用途:穴の面取り、バリ取り

種類:回転式、固定式

刃の角度に注意、安全な方向に使用

クランプ類

用途:加工時の固定、接着時の圧着

種類:Cクランプ、バークランプ、ハンドバイス

適切な締め付け力で、材料を傷つけないよう注意

スティックのり(文房具用)

用途:造形物の定着を少しだけ良くしたいときに使える、いわゆる普通の「スティックのり」です。

文房具コーナーに売っている一般的なものでも十分使えます。ガラスベッドやスチールプレートに薄く塗ることで、モデルの食いつきが少し安定しやすくなります。

薄く均一に塗る、造形後は水で清拭

Magigoo(3Dプリンター用接着剤)

用途:もっとしっかり定着させたい場合は、3Dプリンター用の専用接着剤「Magigoo」のような製品も便利です。

ベッドに塗っておくことで、造形中はしっかり密着し、冷えると自然に剥がれやすくなるタイプのものが多いです。

専用品なので効果は高い、価格はやや高め

3DBenchy:3Dプリンター性能比較の標準テストモデル

3DBenchyは、小さな船の形をした3Dプリンター性能テストの標準モデルです。世界中で使われています。

テストできる項目

  • • オーバーハング性能
  • • ブリッジング能力
  • • 細部の再現性
  • • 表面の仕上がり
  • • 寸法精度

使い方

  • • 無料でダウンロード可能
  • • プリント時間:約1〜2時間
  • • 設定変更の効果確認に最適
  • • 機種間の性能比較に使える